備忘録(仮)

ゲームの感想とか。不定期更新

妹と彼女 それぞれの選択 感想

ネタバレ大

「実の兄妹同士で愛し合うこと」について娯楽、お気楽な要素を抜きにし丁寧に、本気で描いた作品だった。

「最高のやるせなさをあなたに」の一文に惹かれて購入。

ルートは3周分。選択肢はなく、全てが新しいお話で構成されているため普通の美少女ゲーみたいにスキップ、なんてことがない。

文学的で読ませるテキストが美しい。心理描写が丁寧なため1つのルートのボリュームが半端なく、その上鬱になりそうな展開もあるため、「しんどいが先が気になる」ゲームだった

慧主観ルートで妹への愛の重みをこれでもかと教えられる。所々話の謎や、何かを隠しているであろう妹の態度など、一人称視点ゆえの違和感が残る。

衝撃のラストを残しての陽香ルート。慧視点での疑問が明らかにされ、陽香の考えや行動をまた最初から丁寧になぞっていき、それだけのボリュームを経て、慧主観ルートのラストに繋がる。もうこれだけでエネルギーがすごい。

あともうアイロンのくだりは無理だった。それだけの覚悟があるとはいえ、あまりにも辛いよ。

下した決断、ラスト。もうとにかくやるせない。

ぐったりした気持ちの前に現れたゲーム画面の一文、「満月同棲ルートが解放されました」

なんだそれ!?

3人の視点を交互に読める。こんな書き方ができるの立ち絵のあるノベルゲームって媒体だからこそだよな……

途中で入れ替わりがバレて、同棲することになる話。かなりエロシーンの比率が高くダレる。しかし、ウブな陽香が慣れてきたり、満月の感情の変化を描く上で大切なんだよな

陽香と満月の家の対比が辛い。陽香として学校に通いメキメキ成績を上げているのを見ると、才能があっても人生って親と生まれた環境に左右されてしまうのを見せられて、そこも辛い

陽香がウブなので性行為を満月に手伝ってもらおう、という展開をじっくり描く。主人公も散々いかれてるなと思ったけど、ここに来て妹に抱く感情表現に狂気を感じたわ。本人は真剣だから余計に。特にアメと妹の唇の甘さを比較するテキストキモすぎて引いた。いや、本人は真剣なんだよな。やっぱり理解できない、怖いよ!

毎日3人で練習する事でプレイもエスカレートする。慣れていく過程を丁寧すぎるくらいに描いてるからこそ、変態的なプレイすらもなんだか説得力?がある。ホテルでの制服のやつあまりにもえちすぎて好き。しかし舞台背景のリアリティ強い分、愛のなす技とはいえ主人公の出す量はもはや馬だろ。銅座と比べてたけど主人公が人間離れしてるんだよ!と突っ込みたくなったな

キスマークの話も良かった。そりゃあこんな美少女を両手にコンビニなんて行ったら店員に悔しさで睨まれるわ。

こうして3人で幸せな日々♡って感じだったものの、満月に変化が。

満月、大人びて見えるけど幼少期に愛情を注いで貰えなかったから、慧と陽香、その両親から愛情を受けてやっと自我が芽生えたみたいな。陽香ルートでも「恋をしてる自覚ないの?」の問いに「?」って感じだったし。心はずっと子供のままで。性的な事では満月が上手だったものの、強いやきもち?のような衝動を抑えきれなくなった満月を受け止める陽香が大人びているのが印象的だった。立ち絵の表情もこれまでにない、愛溢れる感じになってるのがまた細かくてとてもいい……

 

 

さすがに感情移入は難しかったし完全に読み手視点。

兄と妹だけの話じゃなくて、周りの人たちの描き方が本当にうまい

2人の両親、とても愛に溢れていて優しい。

朝のちょっとしたやりとり、夕飯時の会話。こんな何気ない場面を毎回、丁寧に丁寧に積み重ねるように描いている。

慧と陽香、裕福で愛情いっぱいの家庭で恵まれて育ってるんだな、ってのが本当に伝わるんだよね。

外から見たら「絵に描いたような幸せ家族」

もし両親と不仲とかならすぐ「こんな家を出て妹と駆け落ち」なんて展開になるに決まってる

そもそも2人、元の性格がめちゃくちゃいい子だし。そんな2人が優しい両親を捨ててまで一緒になる選択をするのは本気で追い詰められた時にしかできないんだろうな。という重みみたいなのがすごいしんどいポイント。

序盤で「この物語に救いはない」みたいなテキストあったけどほんとにしんどいままだったな……

すごい作品でした

あと大抵のゲームは「もっとこういう場面を見たかった!」と言う気持ちになるんだけど。

今作は本当に「書き切った」情熱を感じましたね。不満がない。長かったけど、これが3人の愛の重みなんだと思えるよ