備忘録(仮)

ゲームの感想とか。不定期更新

スロウ・ダメージ 感想

ネタバレ全開

発売前に体験版を触り、面白そうだと感じたものの探索、心理パートが難しそうであること、ニトキラ過去作が自分に合わない部分もあった(咎狗、スイプはプレイ済み)ので様子見。

発売後の感想では「好きな人は好きだけど、合わない人はとことん合わない」等のレビューを多く見かけ、「やっぱり合わないかもな」と思っていたものの、キラル作品の中で圧倒的に絵が好みだったのもあり、普及版が発売したのをきっかけに買った。

 

各ルートシナリオが異なり、どれも面白い。更に真相担当のキャラルートで伏線回収して謎が明らかになる圧巻ぶりは物語として面白かった。

タク→レイ→斑目→藤枝 の順で攻略。

共通ルートは、主人公が絵のモデルの欲望を暴くために切りつけ合ったり、殴り合ったりと割と初めから血まみれでぶっ飛んでいた。そこから各ルートへ分岐。

タク

温厚でボイスの雰囲気も優しく良い人という印象。しかしルートに入ると悩みを抱えてコソコソしてるし、最終的にはトワに「お前が他の誰かに取られるなら……」と刃物を持ち出してくる。しっかりした大人と思いきや極端な行動に出る事に驚き。

全ルート終えてから気づいたけど1、2周目固定にしてはそれなりに真相に近い話に感じた。小さい頃からトワを見てきたことで家族に対するような愛情もありつつ、恋心を自覚する場面がとても良かったな。あと海を観に行ったCGがめちゃくちゃ好き。この後ろ姿だけど何となく距離感とかで2人の関係性が見えてくるみたいなこの描き方がとても好きなんだよな……!顔を見せないCGってたまにあるけど好きです

狂気エンドはタクのトワを守りたいっていうのが悪い方向に出たなと。守りたい、あるいは独占欲なのか好きな相手を閉じ込めてしまう展開は女性向け特有な気がする。

グッドエンドはトワが誰彼構わず寝ること、傷つけられる行為が好きという性格なのが作中でしっかり描かれていたからこそ、タクルートで愛情に溢れた抱かれ方をされてドギマギしたり、顔を見られる事に照れたりする描写が良すぎた。この場面の優しさに溢れたやりとり、作中で1番好きだ。普段はトワがクールでタクが言葉で負けたりする事もあるけど、こういう時はタクがリードしてて、ってのが最高。ラスト、迎えに来たトワの最後の台詞に感動した。

 

レイ

レイの手料理が食べたい。料理のCG綺麗すぎでしょ。

深刻な不況に苦しむ日本というリアルすぎる舞台設定で共通ルートから気が滅入る中、彼の優しさと明るさと気遣いに救われてプレイ出来てたところがある。甘いものとデスマッチが好きというギャップがまた強烈。女言葉を話す男キャラクターを攻略したのは初めてだけど、声もすごく合ってるなあ。

親の高額すぎる借金を背負わされるというしんどい話だった。レイはいい子なので友達も素敵な人たちばかりで、彼女(彼ら?)達がレイのために父親に怒る場面とかそうだもっと言ってやれ!みたいな気分になったね。自分の性別について話したら気持ち悪いと否定され、血のつながりってだけで理不尽な目に遭い……それでも本当の親だから憎めない、更に心配かけないように周りに明るく振る舞えてしまう人。狂気エンドはとにかく痛そうだけど背中のリボンのCGが絵画みたいで綺麗。レイのボディーアートの趣味が思い切り反映され、トワの片目に……というのが背徳的だった。

グッドエンドでは終盤、もうダメかという所で友達、トワからの声援で逆転勝ちする場面が熱くて好き。ラストは爽やかでかわいい2人だったなー。話は好きなんだけど、ビジュアルも柔らかくてかわいい喋り方も、攻略しない方が好みというジレンマ。親のこと、性別や趣味のボディーアートのこと。全部ひっくるめてレイという人物ができていて、またじっくり読み直したい話だった。

斑目

見た目は好きなんだけどな。出た。BLゲーム特有の主人公を敵対視してるまたは暴力がコミュニケーションタイプの男。

不思議なことに、BLゲームの世界観が特殊で殺伐ものが多いためか「容赦無く暴力を振う」「こいつをいじめて良いのは俺だけタイプ」「酷い扱いにしか見えないけど実は愛情」みたいなパターンのキャラが定期的にいる。マフィアのボスとかにありがち。正直この手のキャラクターの行動のどこに愛があるのか読み取れないため「〇〇なことをするなんて。こいつ主人公が好き過ぎるだろ!」という解説込みの他の人の感想を読んで「これが好きという気持ちの表現だったのか」と驚いてばかりだ。

これがもし乙女ゲーだったらただのDV男で犯罪みたいな扱いになりそう。BLだと割と普通にあるので男同士だから成り立つジャンルなのか?この手の系統名ってあるのか。あと良さを見出す読解力が私にはない。BL難しい。

組に所属していた時つるんでいた男が、日常の世界に慣れきったトワを暴力の世界に連れ戻す過程を描いたルートでひたすら痛々しい。一度解放されても「ここは自分のいるところじゃない」とふらふらヤバい男の所へ戻ってしまう。トワと斑目は性格が似てるので側にいて欲しかったのかな……監禁されてる間も生かそうとするあたり憎んでる訳ではない事は感じたけど。

これだけでも充分濃密なのに、マユ、小太郎、エイジも仲間となり活躍する話でちゃんと面白いからずるいんだよな。スーツ姿のトワくん格好よすぎ。更に最後の行為のシーンが甘々で驚いた。普段とのギャップ。

斑目自身のことはトワも探ることができないという締めだったので攻めキャラの心情が分かりにくすぎて感想を言語化しづらい。狂気エンドは機嫌を損ねたから殺されるのか?と恐怖だったが組長になった彼と行動を共にしてて、トワの狂った衝動を受け止められるのは自分だけだと一緒にいる。歪んでるけどこれもひとつの愛だ……と、なぜか納得してしまった。それだけの力があった。

グッドエンドは海外を旅する2人。日常世界のトワが好きな身としては微妙な気持ちになりつつ「こうなる可能性も充分にある」んだよな。ほんと選んだ相手で人生と見える世界変わりすぎ。これだからノベルゲームが好き。

 

藤枝

タクルートで弁護士として出てきていたな、くらいの印象しかなかった。そこだけ見るとどう考えてもくっつく過程が想像できない。まさか1人のキャラで真相ルートを作るとは。

過去に関わる荷物、タクの薬のこと、レイの親の借金……とこれまでの話が絡み、共通ルートで出てきたサブキャラたちも実はちゃんと意味があった構成に驚いた。トワがよくみる悪夢、静かな部屋が落ち着かない。妹がいた記憶がある。ちらほら出てきた情報が当てはまり、真実を見せてくる。BLというよりミステリーやホラー小説のような引き込み方があった。まさかあの人がラスボスとは。最初からやたら面倒見が良くて優しかったのはこれのためか〜。最初から意味もなく優しいやつは危険。CVが神学校のあの人。ほんと悪役がうま過ぎる方だ……すごい。さらにエイジのこと、タクルートに出てきた嬢とかもね。ここで出てくるのか!と驚き。

トワと藤枝、境遇があまりにも悲惨すぎて同性とかそういうの関係なしに一緒になる2人なんだろうな。という説得力がある。風呂のあと話し合う2人と、洋館でトワを抱きしめる藤枝のCGの美しさに泣きそうになる。海辺の場面もキラキラしてて、もうふたりの表情が素敵すぎて。

記憶を取り戻したトワ。真っ黒なトップ画面に色がつく。演出含めて最高でした

シナリオ、キャラクター全てが好きと思える作品だった。

主人公は水のように酒を飲み、ご飯代わりにタバコを吸うので色々と大丈夫か?と不安になったけどもう、かわいい。でも人生が凄まじいからこんな生き方になるのも少しはわかる気がする

トワがひたすらにかわいい、タクルートが一番好きなんだけど、真相ルートがあまりにも凄すぎて「全部明らかになる事がトワのためになるのかな……」とか考えてしまったな。真相が強すぎる。

あとは狂気エンドの種類の豊富さ。命を失って終わり、という話は一つもなく。生きながら堕ちていく共依存的描き方に感動したね

ニトキラさん、トワという最高の主人公を生み出してくれてありがとうございます。

本当に最高のゲームでした。