クリアしました
この作品の制作発表、確か2017年のエイプリルフールだった気がする。当時は旧ツイッターをしてたので新作嬉しい!みたいなこと呟いたのですが、ツイやめて知らない間に発売になってた
瀬戸口さんのテキスト大好きなので「これをプレイしたら終わってしまう」という勿体なさ、さらに「面白いに決まってる」みたいな信頼?安心感がありだいぶ後回し。ようやく触れられた
重厚な物語でした。
瀬戸口さんのイメージ的に、普通の世界の学生もの、その中で主人公はもちろん、取り巻く人の抱えているものや弱さだったりを描くイメージがあって、私はそういう作風がとても好き。だから彼の作品ではMUSICS!が1番好きだったりするしCARNIVALも大好きだ。
SWANSONGは震災がテーマなのもあり、正直かなりしんどくて苦手だ。BSTにもこっちと似たような感覚を覚えた。さらにSF要素が含まれてる為「これまでとは大分印象が違うな……」と彼の作品で冒頭から初めて好きに慣れない予感がした。
しかしプレイを進めていけば、そんなのは杞憂だった
Y地区という、人種も国も違う人たちが集まって暮らしている街、人間離れした力を持つものたち、その力があっても見た目に目立つ特徴が現れたり、幻覚を見てしまったりのせいで差別されたりする。設定はSFでギャングの話でありながら、伝えたいことというか、弱い立場の人を描く場面は特に瀬戸口さんらしいなと思い知らされた。
MUSICS!は夜間学校に通う生徒たちの話でもあり、クラスメイト一人一人にバックボーンがあって、正直読んでて辛かった
学校でバンドを組むルートで作られた曲の歌詞に『順調に生きていたら会わないはずの人たちと出会ったんだよ』という、進学校から夜間高校へ編入した主人公の考えが反映された歌詞はとても印象に残っていて、何だかこのフレーズに瀬戸口さんの作品らしさが出てる気がする。
つまり何が言いたいかというと、ファンタジー作品に見えて日常もの作品にも通ずる、様々な立場の者たちの人間臭さを味わえる重厚な物語で、今作も最高だった
システム面では登場人物が多く混乱しそうで不安だったが、テキスト内がtipsと常にリンクしてるのでキャラと立ち絵を確認しやすいのが本当に便利
印象的なエピソードはタイプBの病院かな。リアルすぎる。瀬戸口さんは精神疾患の患者の描写がリアルすぎるというか上手いしそこで働く看護師さんたちのやり取りも実際の現場みたいだった
(CARNIVALの小説版だったかな?精神病院の描写があってその生々しさにこの人すごいな……と驚いた記憶もあるのを思い出した)
だから襲撃のシーンはほんとしんどかったな。平和に誕生会をやっていた場面から奪われる日常が見てられない、この状況でも毅然と患者さんにケアをする看護師さんたちが本当にかっこいい
実際の事件もこうやって起こるんだろうなという意味でも読んでいて辛いし、その結果も辛すぎた
好きなキャラはさくらかな。物事に対する考え方もなんか好き
体質もあり引きこもってるけど頭の回る子だし。終盤の姿を見てると活躍してるんだと分かる。顔の傷は何があったんだろうかとか。まだまだ物語がありそう
あと馬世傑さん好き。ビジュアルが好きすぎる。亮といいコンビなのもよかった
作中でも使われていたエンディング曲のBGMがとても雰囲気あって良い!
読んでて辛いところもあったけど、瀬戸口さんらしさが詰まった読みやすい長文、死生観のようなものにどっぷり浸かる事ができるのはとても幸せな時間だった。にしてもどのキャラも長文で哲学的なことを語り出すのですごいわ
おそらく美少女ゲーム市場では絶対出せない題材でこの群像劇、ノベルゲームという媒体で読めるのは贅沢極まりない。感謝。
難しくて理解できない部分もあったからまた読み直したい